
ロリポップCRチームのmochikoです。今回は、会社の代表メールアドレス、部署内で共有しているメールアドレスなど、複数人がひとつのメールアドレスを使う際に起こるよくある問題とその対策についてご紹介します。また、知っておくと便利なメールの仕組みについても詳しく解説します。

複数人での共有メールアドレス運用のトラブル
会社の営業所でinfo@example.comというメールアドレスを複数人で使っているケースを思い浮かべてみてください。このメールアドレスを営業所の全員で共有している場合、各々のパソコンでメールを確認閲覧できたり、営業チームは外出先からスマートフォンで確認することもありそうです。
そんなとき、次のようなトラブルが発生することがあります。
- 誰に聞いても削除した形跡がないのに、メールサーバーにあるはずのメールが見当たらない!
- 営業所のパソコンでは確認できたメールが、外出先でスマートフォンから確認できなかった
- 削除したはずなのに、同じメールが復活している?
上記のようなケースは、メールを受信する際の接続方式の違いと、その設定によって発生する可能性があります。
今回は、メールの送受信の仕組みを説明しながら、大切なメールのデータを失わずに、できるだけ安全に運用するための注意点についてまとめていきます。
メールのしくみ
メールのしくみを理解するために、まずは専門用語の説明をします。この記事では以下の用語を次のような意味で使います。
- クライアント
メールソフトが動いている機器のことや、そこで動作しているメールソフトのことを指します。サーバーとの対比で「クライアント」というキーワードを使用していますが、難しく感じる方は、この後の説明ではおおむねメールソフトと同じ意味として読み替えてもらっても構いません。 - メールソフト
クライアント上でメールの送信や受信、閲覧を行うためのソフト(OutlookやThunderbird、Macやiphoneの標準メーラーなど) - メールサーバー
メールを送信したり受信したりするサーバー(本記事では受信時と送信時のサーバーを区別せずにメールサーバーと表記します)
まずは、実際にメールが送られる時の流れを簡単に見てみましょう。

- Aさんが自分のPCからBさん宛にメールを作成して送信する
- Aさんのメールソフトからロリポップのメールサーバーにメールのデータが届く(SMTP)
- Bさんが使っているメールサーバーにメールのデータが届く(SMTP)
- Bさんのメールソフトがメールをメールサーバーに取得しにいく(POPまたはIMAP)
- Bさんがメールソフト上でメールを確認する
かっこの中に書かれているSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)やPOP(Post Office Protocol)、IMAP(Internet Message Access Protocol)などは「プロトコル」と呼ばれるものの種類を表しています。プロトコルとは、通信するときの約束事やルールのことです。
メールにはメールの、WebにはWebのルールがあって、メールソフトなどのアプリケーションが通信をするときは、そのルールを守る決まりになっています。
ここではひとつひとつのプロトコルに対する詳しい解説は割愛しますが、SMTPはメールを送信する時に使うルールで、POPとIMAPはメールを受信する時に使うルールであるということだけ覚えていただければ大丈夫です。
なんとなく全体像を把握したところで、Bさんのメールサーバーにメールが届いてからBさんが実際にメールを確認するまでを、さらに詳しく見てみましょう。
Bさんから見ると、Aさんからのメールは自分のスマートフォンまで自動的に届いているように感じるのですが、実はそうではありません。
スマートフォン上で動いているメールソフトはメールサーバーからメールが送られてくるのを待っているのではなく、自らメールサーバーにアクセスしてデータを取得しにいっています。
つまりメールサーバー側がクライアントに「メールが届いたよ」と送ってくれているのではなく、クライアント側からメールサーバーに「メールはありますか?」と問い合わせをしているのです。
POPとIMAPの違い
メールソフトでメールを受信する方法は、POPとIMAPの2種類があります。 それぞれクライアントからメールサーバーにアクセスするという点は共通していますが、 以下のような違いがあります。
POP
- メールデータをダウンロードしてメールソフト上で閲覧することが前提の方法
- 基本的にメールサーバーにメールが残らない(※1)
IMAP
- メールサーバーにあるメールデータをメールソフト上からそのまま閲覧、管理する方法
- メールサーバーの容量を気にする必要がある
※1 メールサーバーにデータを残す設定も可能です。
スマートフォンなどのモバイル機器で動くメールソフトやWebブラウザ上で使うメールソフトなどは、 メールデータをダウンロードできないため、IMAPが使われています。
共通メール運用のトラブルの原因と対処方法
ここで最初に出てきたケースについて、改めて考えてみましょう。何が起こったと考えられるのでしょうか。
- 誰に聞いても削除した形跡がないのに、メールサーバーにあるはずのメールが見当たらない!
- 営業所のパソコンでは確認できたメールが、外出先でスマートフォンから確認できなかった
- 削除したはずなのに、同じメールが復活している?
メールを受信するときのPOPとIMAPの違いを踏まえて、順番に見ていきましょう。
誰に聞いても削除した形跡がないのに、メールサーバーにあるはずのメールが見当たらない!
考えられる要因
- 新しいパソコンAで新たにメールソフトの設定を行った際の設定ミスが考えられる
- POPにてメールサーバーにデータのコピーを残さない設定にして、メールを受信した
メールデータをパソコンAでダウンロードしてしまうと、別の時にパソコンBでメールを閲覧しようとしてもメールサーバーにメールデータがないので、メールを閲覧することができません。
ただし、パソコンAでメールデータをダウンロードするよりも前に、パソコンCでPOPで接続しメールデータをダウンロードしていた場合は、パソコンCではメールの内容を確認することができます。
対処方法
- POPでメール設定をする際に「メールデータのコピーの残す」という設定にチェックが入っているか確認する
- POPを使わずにIMAPで設定する
POPでは基本的にメールデータをダウンロードするため、メールサーバーに残しません。メールソフトによっては「メールデータのコピーの残す」という設定がデフォルトで有効になっていないケースがあるので、必ず確認するようにしましょう。
また、POPを使う理由が特にないのであれば、メールソフトの設定をIMAPで統一することで防ぐことが可能です。
営業所のパソコンでは確認できたメールが、外出先でスマートフォンから確認できなかった
考えられる要因
- 営業所のパソコンのメールソフトをPOPでメールサーバーにデータのコピーを残さない設定にして、メールを受信した
最初の例でも説明したとおり、メールが確認できた営業所のパソコンは、メールサーバーからデータが削除される前にメールをダウンロードしていたと考えられます。
もしかしたら、このパソコンのメールソフトの設定がメールサーバーにデータのコピーを残さない設定になっているかもしれません。
スマートフォン上で動くメールソフトはほとんどがIMAPを使っています。IMAPでは、メールサーバー接続した時点でそこにデータがなければメールは確認できません。
対処方法
- 該当のメールが閲覧できるパソコンのメールソフトの設定を確認する
POPでメールの設定を行う場合は、「メールデータのコピーの残す」という設定に必ずチェックが入っているか確認を行います。
こちらも、POPを使う理由が特にないのであれば、メールソフトの設定をIMAPで統一することで防ぐことが可能です。
削除したはずなのに、同じメールが復活している?
考えられる要因
- 削除したのはPOPでダウンロードしたパソコン上にあるメールのデータであり、メールサーバーからは削除されていなかった
- メールサーバーにメールデータが残っている状態なので、別のクライアントには同じメールが届いた
POPは基本的にダウンロードしかできないので、メールソフトでメールを削除してもメールサーバー上のデータを削除することはできません。
そのため、別のパソコンやスマートフォンがメールサーバーにアクセスすると、メールサーバーにはメールのデータが残っているので、パソコンで消したはずのメールが復活したようにみえてしまいます。
対処方法
- メールのPOP設定を見直す
POP接続であっても、メールソフトの設定で削除操作と同時にメールサーバー上のメールデータを削除することが可能です。また、IMAPでメールを削除すると、メールサーバーのデータを削除することになるので、同じメールが再び届いてしまうということがありません。
複数人でのメール管理の落とし穴
POPによる接続であっても、設定さえ正しくしておけばメールサーバーにメールデータを保持しておくことは可能です。
しかしPOPの基本的な考え方は、「クライアントにメールデータをダウンロードして管理する」というものでした。
複数人でメールアドレスを共有する場合、メールサーバーにはメールデータを残しておく必要があるので、POPの基本的な考え方とは少し異なる使い方をすることになります。
また、POPを使ってメールソフトの設定をする際には、メールアドレスを共有する人全員が設定を正しく行う必要があります。
1台でも設定を誤ると、メールサーバーからメールのデータを削除してしまう事態になる危険性があることが先程あげた例でお分かりいただけたと思います。
こういったことを起こさないためにも、普段はメールのデータをメールサーバー側で管理する、IMAPによる接続を使うのが安全かもしれません。
ただし、残しておきたい大切なメールは、必ず定期的にメールサーバーからダウンロードしてメールデータのバックアップを取るようにしましょう。
メールサーバーにデータを残し続けることで、データ容量やメールの数が増えすぎてしまうケースもあります。メールサーバーの上限を超えないようにデータを整理しながら利用することが大切です。
共有メールアドレスでのよくあるトラブルと、POPとIMAPというメールを受信する際のルール(プロトコル)の違いについて簡単に説明してきました。
最後に、POPとIMAPにはそれぞれメリットとデメリットがありますので、利用用途に応じておすすめなケースを紹介します。
POPがおすすめなケース
- メールの送受信をひとつのクライアントのみで行う場合
- インターネット接続ができない環境で過去のメールを確認する必要がある場合
- メールサーバーのディスク容量が少ない場合
IMAPがおすすめなケース
- 複数人で管理する共有メールアドレスを使う場合
- 外出先と自宅など、複数のクライアントからメールを使う場合
- メールが到着し次第、新着メールとして常に確認しておきたい場合(一般的にPOPより早く確認ができます)
- モバイル機器などクライアントのディスク容量が少ない場合
- パソコンを買い替えた時にメールデータの移設をせずにそのまま使いたい場合
まとめ
- 基本はIMAPで利用してサーバーのデータを複数クライアントから閲覧するのがおすすめです
- 新しくメールソフトを設定する時は設定に間違いがないか特に注意しましょう
- 定期的にメールサーバーのデータの容量やメールの数をチェックして、バックアップを取るなどメールデータを適切に管理するようにしましょう
メールの設定内容を理解して、正しく安全に共有メールアドレスを運用しましょう。