事例紹介

未来の道具を、手に入れた気分。広告制作35年のクリエイターが、AIと遊びながら作る自分のサイト

岡山を拠点に、CMや広告の企画・演出、コピーライティングなどを手がける「石田図工室」の石田康成さん。香川県のPR「うどん県。それだけじゃない香川県」をはじめ、35年近くにわたり数々の印象的なクリエイティブを生み出してきたベテランクリエイターです。

そんな石田さんが、Web制作の裏側の専門的なコードはAIに任せつつ、無料版のClaudeと「ロリポップ!デプロイナウ」を使って、自身の新しいポートフォリオサイトを立ち上げました。

方眼紙のような背景の上をキャラクターが歩き、レトロゲーム風の音楽室があり、スクロールするたびに言葉が心地よく動く。温かみと遊び心に満ちたサイトは、どのようにして生まれたのでしょうか。

今回は石田さんに、AIとの試行錯誤やデプロイナウとの出会い、そして「あえて非効率や無駄を楽しむ」という独自のクリエイティブ論について、じっくりお話を伺いました。

「クラウド」だと思っていたClaudeで、手探りのサイト作りが始まった

ー 今回ポートフォリオサイトをご自身で作られたとのことですが、きっかけは何だったのでしょうか?

石田さん:「今のAIを使えば何でも作れちゃうらしい」という噂を耳にして、自分の手でどんなものができるんだろうと試してみたのが最初です。

もともとAdobeのテンプレートで作った自分のポートフォリオサイトがあったんですが、僕はWebのディレクションはできても、裏側の専門的なコードはよく分からなくて。手探りで画像をどんどんアップしてしまっていたので、サイトの動作が重くなっていたのが気になっていたんです。それを軽く、どのデバイスでも見やすい形に変えたいなと思っていました。

制作中の「石田図工室」サイトのトップページ。方眼紙の背景に「なにつくる?石田図工室で。」の文字とロゴの箱が並ぶ

制作中の「石田図工室」サイト。手描きのぬくもりとギミックが散りばめられている。

ただ、恥ずかしいんですけど、僕、1週間前まで「Claude」のことをクラウド(Cloud)だと思ってたんですよ。人から「最近何やってるの?」って聞かれて、「いや、クラウドでサイト作ってるんだ」って答えてたくらい知識がなくて(笑)。無料版の無印Claudeを使って手探りで進めていきました。

AI感を消しつつ、AIで作っていることは隠さない

ー Webの専門知識がない状態から作られたとはとても思えない、温かみと遊び心にあふれたサイトですよね。

石田さん:普段から広告やCMを作っているので、企画を立てたり、演出を考えたり、「こういう見せ方にしたい」というビジュアルのイメージはもともと頭の中にありました。

ただ、いざAIと一緒に作るとなると、最初は思ったように動いてくれなくて大変でしたね。何が出るか分からないガチャを回すようなものなので、プロンプトで言葉を工夫しながら、「できた」「できない」を手探りで繰り返していきました。

インタビュー中の石田さん。自宅のリビングで、愛猫のおはぎちゃんを抱いている

制作はいつも自宅のリビングで。愛猫のおはぎちゃんもそばに。

石田さん:作るときに心がけていたのは、「いかにもAIが作りました」というテンプレートから外すことでした。AIが作るサイトって、すごく効率的で、見出しがきれいに整列したスマートなものになりがちですよね。そこを外して、ちゃんと人の温かみや手触りを出したかったんです。背景を方眼紙にしてみたり、スクロールすると言葉がグッと動いたり、キャラクターがトコトコ歩いてきたり。

でも同時に、「AIの力を借りて作ったことは隠さない」というのも決めていました。

ー 「音楽室」のページにも「サイトのBGMはGeminiでつくった」と書かれていて、AIと楽しそうに協業されている空気感が伝わってきました。

石田さん:AIで作ったことを隠す意図はまったくないと思っていて。むしろ「AIで作ったものをおもしろがる、遊ぶ」くらいが今の自分には合っていますね。

AIにすべてを任せるのではなくて、IllustratorやPhotoshopでレイアウトのラフやギミックの素材をつくったり、自分で描いたイラストをAIに渡したりしたんです。「自分の頭の中にあるイメージ」と「AIの出力」をブレンドしながら、何回もやり取りを重ねて少しずつ理想に近づけていきました。

フォルダを右から左へ動かしただけ。「未来の道具」のようなデプロイナウ

ー Claudeで形にしたあと、公開先として「デプロイナウ」を選んでいただいたのはどうしてだったのでしょうか?

石田さん:以前に見かけた、Xの広告ですね。それがずっと頭の片隅にあったんです。それで、実際にClaudeでサイトのデータができあがったときに、「そういえば、あのデプロイナウっていうのがあったな」と思い出して。サイトを開いて、フォルダごと画面の中にぶち込んだら、それだけで勝手に公開までやってくれました。

ー フォルダをドラッグ&ドロップしてアップロードする機能は、まさに「知識がなくても手軽に公開できるように」と最近追加した機能だったんです。

石田さん:助かりました。あの機能がなかったら、多分やっていないですね。複雑な公開作業も必要なく、ただフォルダを右から左へ動かしただけでしたから。裏側の専門的な仕組みは分からなくても、「枠の中にフォルダを入れたら、なんか公開できちゃった」。何の失敗もエラーもなく「成功です」と出て、ちょっとした小さな喜びがありました。

僕らの世代の感覚で言うと、ドラえもんの道具の「アニメーカー」みたいな感じなんですよ。色んな素材を機械の中にバッとぶち込むと、1本のアニメになって出てくる。まさにそんな、未来の道具を手に入れたような感覚でしたね。

デプロイナウのプロジェクト作成画面。フォルダをドラッグ&ドロップしてアップロードできる

フォルダをドラッグ&ドロップするだけで、Web上に公開される。

効率を求めるAIのなかで、いかに「無駄」や「非効率」を大切にできるか

ー これまでのお仕事や、今回のサイト作りを通して、石田さんが大切にされているクリエイティブのこだわりについて伺えますか?

石田さん:CMの絵コンテを描くとき、僕は今でもタブレットを使って手描きしているんです。最近は絵コンテの段階からAIを使ってきれいに仕上げるケースも多くて、それはそれでいいんですよ。叩きとして分かりやすい。ただ、やっぱり「いかにもAIが考えたモノ」にはどこか味気なさや予定調和を感じてしまって。アイデアを自分の頭でじっくり考える部分や、手の感触みたいなものは大切に残したいなと思っています。

石田図工室サイトの「できること」のページ。「LET'S CREATE」の見出しと文章の上を、黒猫のキャラクターが歩いている

「できること」のページ。文章の上をキャラクターがトコトコ歩いていく。

今回のサイトも、これを営業ツールにしてどんどん仕事を取ろう、という目的で作ったわけではないんです(笑)。ビジネスの枠から一歩外れて、自分の好きな「おもしろいこと」を誰の制約もなくやってみる、そんな実験場のような場所ですね。

世の中全体がAIで「効率化」を求めているからこそ、その中でいかに無駄や非効率を面白がれるか。仕事では削られがちな遊び心を盛り込んでいます。

レトロゲーム風の「石田音楽室」。音楽室に立つキャラクターと、「はなうたを きく」などのコマンドが並ぶ

レトロゲーム風の「石田音楽室」。石田さんが鼻歌で口ずさんだメロディも聴ける。

手触りのあるものを作りたい。ZINEや短編小説への想い

ー 効率の時代だからこそ、「手触り」や「遊び心」の価値が上がっている、と。

石田さん:そうですね。ネットで何でも見られるデジタル社会だからこそ、肉体的に触れられるものの価値が相対的に上がっている気がします。

実は去年の夏くらいから、趣味で短編小説を書き溜めていて。10作くらいになってきたので、個人で本(ZINEやリトルプレス)を作って、ブックフェアのような場所に持っていけたらいいなと思っているんです。

大学時代に同人誌を作っていた頃の感覚に戻って、誰のためでもなく、自分が作りたいものを形にする。今回のデプロイナウでのサイト作りも、根っこにある気持ちはまったく同じですね。

これから何かを作ってみたい人へ

ー 最後に、これから何かを作ってみたいと思っている方へ、メッセージをいただけますでしょうか。

石田さん:20年前に僕が独立した頃は、「自分のサイトを作らなきゃ」という強迫観念があっても、お金もWebの知識もなくて簡単には作れませんでした。それが今や、仕組みを詳しく知らない僕でも、頭の中にあるイメージをAIに伝えて、デプロイナウを使えば手軽に形にできて、世界に公開までできてしまう。

AIやWebの技術って、僕ら門外漢にはブラックボックスに見えたりしますけど、時代が進むにつれて「専門知識がなくても、直感的に楽しく使えるもの」がどんどん増えてきています。一部の詳しい人たちだけでなく、みんなが使える道具が手に入るようになった。本当に未来がやってきた感じがしますね。

理屈なんて分からなくても、AIと一緒に楽しみながら作って、デプロイナウにアップロードすれば公開できる。予算や知識がなくて諦めていた人にこそ、「こんな風に楽しくチャレンジできるんだよ」ということを伝えたいですね。

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